はじめに
銀河系には、その銀河を構成する物質の総質量によっては説明できない、「隠れた」質量があることが知られている。銀河系の旋回速度は、多くの場合、その銀河に属する物質の総質量から計算されるよりも、周縁部においてはるかに速く、その速さは、現在知られていない物質の質量によるものであると予想されている。その予想を確かめるように、銀河を観測するときに現れる重力レンズ効果は、銀河を包むように重い質量があることを示し、この未知の質量が暗黒物質と呼ばれている。暗黒物質の正体については様々な予想があるものの、現時点で有効な手掛かりはない。
また、銀河系は、互いに引き離されており、それは空間の膨張によっていると考えられている。しかし、そのように空間を膨張させるエネルギーが、いかなる由来のものなのか、まったく分かっていない。有名な数値として、宇宙の全存在の7割強は、この暗黒エネルギーが占め、2割強を先ほどの暗黒物質が占め、現在知られている物質の構成比率は5%ほどに過ぎない。暗黒エネルギーの正体についても、暗黒物質と同様に、現状では手掛かりがない。
本投稿では、ひとつの単純な提案をしてみたい。これまでの投稿のように、ここでの記述は抽象的・観念的であり、具体的な数学的定式化を伴うものではない。ただ、理論を詰める際の、何らかのアイデアのモチーフを提供したいという思いで、ひとつ考えてみたい。
1.基本となる論点
これまでの投稿においては、物理的な存在を、空間である有と、粒子である無(点には大きさがない)のあいだの関係によって捉えてきた。その基本的な論点は、次のようなものである。
a 有と無は矛盾する。
b aの矛盾があるとき、無は有による反発を受ける。
c aの矛盾が現れるとき、有は無によって混乱する。
すなわち、無の存在は、その無が有と矛盾するために(aである)、有のなかに揺らぎを生み、その揺らぎの組み合わさり方に応じて、重力相互作用以外の3つの相互作用が生じる。そして、有と無の矛盾は、有による無への反発(bである)を生み、その反発は、粒子存在の運動の源泉である(あらゆる物が運動しているのはそのためである)。また、aの矛盾は、無が有のなかに現れるときに、その無による有の混乱(cである)を生み、その有の混乱は、粒子存在の質量と、重力の源泉である。
この議論は、粒子を、実在する無として考えており、その点に、議論の根本がある。すなわち、以上の議論に加えて、先の投稿(電磁気力の構造)においては、無の種類を考えることで、電磁気の仕組みを考えていた。無の種類とは、次の2つである。
ⅰ 有を吸い取るもの
ⅱ 有を押し出すもの
ⅰおよびⅱは、有のなかに無を構成するタイプにあたる。だが、有を吸い取るにせよ、押し出すにせよ、そこに構成されるのはあくまで1つの無であるため、ⅰおよびⅱは、有のなかに加わる圧力として成立し、その圧力同士のあいだで、電荷の作用が発生する。
2.無の種類再考
これまでに考えた議論の大筋は以上のようなものだが、そのうちの、無の種類については、再考の余地がある。すなわち、無の種類とは、都合4つを考えることができる。
ⅰ 有を吸い取るもの
ⅱ 有を押し出すもの
ⅲ 有を吸い取り、かつ押し出すもの
ⅳ 有を吸い取ることも、押し出すこともしないもの
ⅰは正電荷をなし、ⅱは負電荷をなすことを先にみた(そのように考えると電流が負から正へ流れるのが自然に理解できるため)が、ⅲは、有に圧力を及ぼさないために、電荷を持たず、電気的に中性である。ただ、この無は、それ自体で矛盾を抱えているため、独特の振動をする。すなわち、有を吸い取ることと、有を押し出すことの2つを抱えることによる矛盾が、有のなかに現れる場合と、有から隠れる場合と、その矛盾が落ち着いておさまる場合のあいだの、無の振動である。そのうち、矛盾が有のなかに現れる場合と隠れる場合のあいだの振動は、無の発現と沈潜のあいだで不安定である弱い相互作用(先の投稿(物理的対象の本質)の内容である)に等しい。そして、ⅲの抱える矛盾がおさまる場合の無は、有のなかに現れる無としては最弱であるものの、有において現れていることに変わりはないため、微弱な混乱(cである)を伴い、若干の質量を帯びる。すなわち、3つの場合のあいだで振動するとともに、弱い相互作用と重力相互作用のみを帯びる、ニュートリノである。
3.暗黒物質
無の種類のうち、ⅰおよびⅱは、正電荷および負電荷にあたり、物質はその無のいずれかによって構成される。ⅲは、すでにみたようにニュートリノにあたる。暗黒物質は、一般に、電荷を持たず、重力相互作用のみを持ち、かつ安定的である、と予想されている。ⅳは、この暗黒物質にあたると考えることができる。すなわち、有を吸い取ることも、押し出すこともしない無は、単に有のなかに置かれているのみであり、ⅰおよびⅱの電荷を持たず、ⅲのように不安定であることもなく、安定している。かつ、ⅳも無であることに変わりはないため、ⅳの無が有のなかに置かれることによって、cの有の混乱も生じ、その混乱は、ⅳの質量と重力の源泉である。そのようにみると、暗黒物質の性質として予想されるものは、ⅳについて考えうる無の性質に、よく一致する。
4.暗黒エネルギー
暗黒物質が、無の種類として最も単純なⅳにあたると考える場合、暗黒エネルギーについても、ひとつの簡単な見立てがつく。すなわち、ⅳが密集して銀河系を構成すると、無が密集することによって、空間である有の実体が、無の密集から押しのけられて、銀河系あるいは銀河団の外側へと累積していく。だが、実体とは空間をなすため、有である実体の累積とは、その空間の、空間的膨張にあたる。直近の報告によると1、空間を膨張させる暗黒エネルギーは、宇宙全体で均一であるというよりも、不均一に働いているとみられており、その点は、本稿での見立てに一致する。すなわち、有の累積は、ⅳの密集度に応じており、ⅳの密集度は、場所によって様々であるのが自然であるためである。
結び
以上は、ごく簡単な記述に過ぎず、具体的な理論的定式化にはあたらない。ただ、発想法としては、分かりやすいと考えており、理論なり観測の、何かしらのたねになれればうれしい。無の実在は奇妙に映るかもしれないが、説明原理としては、一定の可能性をもっていると筆者は考えている。なお、投稿数が(少しではあるものの)増してきているため、議論の途中で、以前の参照に留める場面が多くなってきた。その点の手間がかかることはお許し願いたい。
2025.4.26 更新

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