自然本性についての考え事です

ITA VERITAS EST, UT FLOS

ダブルスリット実験における波動と粒子:実体論からの説明

1.基本的な考え方

 筆者は、物理的な実在として、空間という有(物理的な実体をなす)と、その有のなかに置かれる、粒子という無のふたつを考えている。物理的な相互作用は、有のなかに無が置かれることによる、有が無化していく無的性質の波と、無と有が矛盾することによる、有の高まりとしての有的性質の波の、組み合わさり方によって、3つの場合を帰結する。すなわち、無的性質の波と有的性質の波が整列するとともに、比例するもの(この場合、無が強まるほど有も強まるため、無は実体中に現れず、かつふたつの波は反発し合って直交する)であり、電磁波にあたる。もうひとつは、波が整列するとともに、反比例するものであり、この場合ふたつの波は両弱ボソンをなして、弱い相互作用を担う。そして最後に、波が整列せずに、ずれている場合が考えられ、この組み合わさり方においては、無的性質の波と、有的性質の波は、それぞれ独自に振る舞う。強い相互作用は、これらの波の細かいものが絡み合う効果である。そして、この最後の場合(物質をなす)においては、無(粒子)を中心として、有的性質の波を伴わない無的性質の波と、その逆に、無的性質を伴わない有的性質の波と、そして、ふたつの性質を伴う波動の、計3つの波が生成する。このうち、ふたつの性質を伴う波は電磁波をなし、無的性質のみの波は、場所と無関係に連関する量子もつれをなし(無的であるため)、有的性質のみの波は、巨視的にはおそらく重力波をなす。

2.ダブルスリット実験の謎

 以上の考え方から、光子を用いたダブルスリット実験を説明してみたい。ダブルスリット実験は、2つのスリットを空けたつい立てに向かって、光子を1個ずつ飛ばしていくと、スリットの先において検出される光子の位置が、縞状になる、という実験である。それは、光子が、スリットを通過するときに、波状に干渉し、その波の干渉に応じて、移動していくからである。その点だけみると、光子は単なる波であるようにも映るが、スリットのどちらを光子が通るのか、スリットにも検出器を置くと、光子は必ずどちらかの検出器にしか検出されず、かつ、スリットの先に、干渉縞をつくることもしなくなる。そのため、光子自体は、1つのものとして存在するものの、その運動の経路を定めるときは、波動として伝わる。興味深いのは、昨年の報告によると1、光子の波が、スリットにおいて正確に2つに分裂する場合があることが確認できる、という点である。すなわち、スリットに偏光板を置き、スリットの先において光子を検出するときに、光子の偏光の度合い(それはスリットにおける偏光板の影響を受ける)をも検出すると、光子が分裂してスリットを通過したものとしか考えられない効果が確認できる。すると、謎はさらに深まることになる。すなわち、光子という運動は、正確に波動をなし、スリットにおいて分裂する場合があるものの、たとえ波動が2つに分裂するとしても、検出される光子は1つのままである、という謎である。

3.実体論からの説明:トンネル効果

 この問題について、1節にまとめた筆者の意見から、説明を試みてみたい。すなわち、物理的実在には、空間という有と、粒子という無のふたつがある、という意見である。波動性をもつものは、基本的に空間を占めるため、実在としては有にあたり、他方で粒子は、常に1個のものである。そのときに、この波動と、粒子が、それぞれ独立に振る舞う可能性が、量子力学でのトンネル効果において確認できる。トンネル効果とは、例えば電子が、十分に薄い障壁に衝突すると、一定の確率で、障壁の向こう側にすり抜ける、という現象である。日常の物体の場合、壁に物体をぶつけても、その物体がその壁を壊す力を持っていないかぎり、壁を貫通することはない。しかし電子のような、ごく小さなスケールにおいて、波動のように記述される粒子は、障壁の向こうにも、その波動が一定の確率で伝わることから、障壁を壊さずとも、向こうへとすり抜ける場合があり、この現象は様々な場面において実証・応用されている。この現象を、実体論の文脈で解釈すると、空間(有)における波動は、基本的に粒子という無によって生成し、無はその波動に乗って移動するものの、無である粒子は、ときにその波動から離れて移動しうる、と考えられる。すなわち、トンネル効果においては、障壁に向かう波動は、障壁にあたってはね返るものと、障壁をこえて向こうに伝わるものに分かれるが、粒子は、はね返るものの他に、一定の確率で、向こうへとすり抜けるものがある。すなわち無である粒子は、自分の波動が分裂する場合、いずれかの波動へと、自分が属する波動を選択することができる。そのことは、粒子が波動の原因でありながら、波動をこえて、複数の波動のあいだを移動・選択しうる、という点を示している。

4.ダブルスリット実験の場合

 この、粒子による波動の選択は、ダブルスリット実験によくあてはまる。すなわち、光子という粒子(無)は、スリットに向かって飛んでいくときには、自分の波動(電磁波)に内包され、その波動の運動に従っている。しかし、波動の伝わる位置が、2つのスリットにおいて分裂する経路をとる場合、光子1個を内包していた波動は、2つへと分裂していく。光子は、その2つの波動の、いずれかを選択するため、スリットの先には、光子1個しか現れない。しかし、そのように光子が自分の所属を選択するとしても、2つに分かれた波動の効果は、互いに干渉し合い、そのため、光子が所属する波動の経路にも、その干渉の影響が残り、スリットの先では、干渉縞が形成される。

5.まとめ

 以上は、粒子と波動が、それぞれ独自に振る舞いうる可能性を考えている。その説明の根本には、粒子が無であるのに対し、波動が有であるというように、ふたつの存在の実在を区別する、という論点がある。すなわち、粒子と波動が、いずれも同じ実在において一致するならば、このような説明は困難である。だが、量子力学的な対象についての、粒子性と波動性が、実在としてふたつの異なる存在をなすと考えると、それらの相反する存在が、一定の範囲で、それぞれ独自に振る舞う、と考えることが可能になる。そのようにみれば、ダブルスリット実験において、波動が正確に2つに分裂しつつ、検出されるのはただ1個の光子である、という点が、理解可能になるのではないだろうか。

2025.4.1 更新

  1. https://www.hiroshima-u.ac.jp/qmp/news/78281 ↩︎

ホーム

コメントを残す